先週は、内科健診と歯科健診が続きました。お医者さんに歯医者さんが現れるので、子どもたちはドキドキです。二日続きというのも、なかなかない設定でした。(お医者さんの都合ですからね。)
私が勤め始めたころは、毎日の歯磨きをしていませんでした。お家でもなかなか歯磨きが定着しにくく、虫歯だらけの子どもたちが多かったのを記憶しています。6月の歯科健診では、歯磨き週間と銘打って、食後に歯磨きを取り組んでいました。本当に一時的な取り組みでした。これでは、歯磨きは定着しませんよね。今の子どもたちや保護者は、歯磨きの取り組みや意識は高く、きれいな歯をしている子も多いです。歯磨きが容易いことではないかもしれませんが、小さいころから取り組んでおくことは、大人になったときに子どもたちの健康や食を守っていく事につながっていきます。だから、非常に大事なことです。
昔の未熟な取り組みの中でも、良かったなぁということがありました。その歯磨き週間では、歯磨きだけでなく、歯磨きや歯医者さんへの興味を広げる取り組みをしていました。歯磨きのお歌を歌うこともですが、お口のおもちゃで虫歯の箱を歯ブラシでこすったり、きれいにしたということで、白い箱に入れ替えたりと、あそびとして取り組みをしてきました。見通しを作るということも大事なのですが、興味を広げていくことにもなり、大切だったなぁと思い返します。
今回の健診では、先生たちは朝からお話をしています。暗示にかけるかのように「今日はお医者さんがくるからね」と声にしていきます。見てもらうための準備では、椅子に座り、聴診器のごとく、おなかに手を当てていきます。デモンストレーションを繰り返し、楽しい遊びでもあります。いざ、お医者さんに診てもらうときには、お友だちが診てもらっているのが見えるようにしたり、順番が分かるように、次の人の席を用意したりもしていきます。見通しをもたせるための配慮でもあります。
見通しを持つために必要なことって何でしょう?一番は気持ちが落ち着いていることです。園で診てもらうということは、いつもの教室であり、いつもの先生がおり、知った顔(お友だち)がいるという安心を生む条件があるということです。病院へ出向くと、この安心は得にくいんです。安心しているから、みんなの様子も見ることができます。先生の話を聞くことができます。不安だけで診てもらうこともできます。それが一番の大切な条件になります。次に、お医者さんがどうしているか?お友だちがどうやって診てもらっているのか?を見ようとするのですが、ある程度、距離がある方がいい子もいます。先生のそばやひざがいい子もいます。次の順番のために椅子を移動することで見ていたものがいっぺんに不安に変わる子もいます。見通しをもつための条件は、とても、デリケートなんです。内科健診では、子どもたちは立った状態で見てもらいました。歯科健診は、歯医者さんのひざで寝ころんで診てもらいました。同じ診てもらうのでも、立ってと寝ころんででは大違いです。なにせ、姿勢を変えなくてはいけないのです。この姿勢を変えるのがかなりの恐怖をあおります。ボディイメージのできにくい子どもたちにとって、姿勢を変えるのは自分がどうなっているのか、さっぱり分からず、恐怖ばかりを感じてしまいます。なので、歯科健診のほうが不安だっただろうと思います。単純に、見通しをといいますが、その子その子の見通しにつなげていく条件づくりをすることが大事なんですね。
ことばで自分の気持ちを伝えようとしているSくん、Tくんですが、Sくんはお医者さんを前に「したくない」と少し距離をとっていました。Tくんは不安な表情を浮かべながらもなんとか自分から診てもらうことができました。二人ともお医者さんに診てもらうということは十分に分かっています。先生たちも「大丈夫よ」と声をかけてくれているので、大丈夫なんだろうという気持ちもないわけではないのですが、やはり不安です。終わった後に、ドキドキだったTくんに、「お医者さん、怖かった?」と尋ねると、親指と人差し指で「少し」という表現をして「すこし、こわかったんよ」と教えてくれました。それを聞いてか横にいたSくんは、大きめの幅の指で気持ちを表してくれていました。Tくんよりかは怖かったことを自分自身で感じ、その気持ちをうまく表現していました。怖いものは怖いんです。しょうがないんです。でも、SくんとTくんには、なんで大丈夫だったのか?に気づいていく働きかけが大事になっていきます。「痛くなかったから?」「おなかと背中を触られただけだったから?」「あっという間に終わったから?」「先生がそばにいたから?」などなど。不安が起きた時に、安心の材料を見つけていく事が大事です。大丈夫だという糸口を見つけていく事が必要です。手助けは必要ですが、これからは自分自身で、見出す力へつなげていき、自分自身をふるいたたせていく力へと伸ばしていく、そんな入口にたっていると思います。
子どもたち、一人一人、どんなことを頭の中で描いているでしょうかね。
(さんぽ道にある田んぼで田植えがはじまりました)