チャレンジサーキットが始まりました。トップバッターをきったのが、きりんさんたちです。お母さんを引き連れて、園にやってきたことで、朝から特別な気持ちでこの日を迎えています。期待と不安をもっているグループです。
そんな気持ちもあって、駐車場から、いやいや、家から行くのをしぶっていたSくん。本当に不安だったのでしょうね。駐車場から、バス置き場へ。バス置き場から、園庭へ。園庭から玄関へ。玄関から教室へ。どれだけ時間をかけてやってきたことでしょう。自由あそびの時に、上の園庭でお茶を飲んでいました。「頑張れよ」という言葉は彼には重荷になるだけなので、野暮な言葉はかけません。「みんなのところで遊ばないの?」と聞くと、「ここで、休憩する」と座り、しばらくして「あれ(うんてい)してくる」と、うんていを渡るのを見せてくれました。気持ちを調整しているのでしょう。嫌だと思いながらも自分を奮い立たせていたのでしょう。そういえば、練習の時、かたくなに猫の帽子をかぶるのを嫌がっていました。スタート地点から「ぼくは、かぶらないんだ」と主張しているほど。なので、「今日は、猫の帽子はかぶらんの?」と聞くと、考える表情になりました。「Sくんの頭から、お花が咲いていたらかぶらんで、いいのにね。じいちゃんがお野菜うえたら、芽がでてくるじゃろ、あんなふうに出てきたらええなぁ」と頭に種を植えるおまじないをかけておきました。
さて、どきどきしながらも(スタート地点にお母さんかお父さんかを呼ぼうとする素振りも見せながらも)スタートでは気持ちを切り替え、大きな声で返事をし、競技を始めました。自分のすべき競技はよくわかっています。相手のお友だちのために、飛び石をおき、自分の番では渡り、猫の帽子のところです。どうするかなぁと思ってみていると、何かに目をつけたように帽子を選んでかぶっていました。カメラを構えているこちらを向いたので、頭の上で葉っぱの開く仕草をすると、にっこり。自分の中の鬼門を打ち破ったかの表情でした。そのあとのたけぽっくりも、自分が進もうと思うコースを見据えてから、準備をし、一歩一歩力強く、自信にみちてように進んでいきました。自分の力を存分に見せてくれていました。チャレンジサーキットを終えて、お母さんたちとの別れの場面では、緊張が切れたのでしょう、悲しみの涙でしたが、がんばったからこその姿だったと思います。
帰る前の時間、「Sくん、今日は、ねこ(帽子)かぶっとったね。なんで?」ときくと、「くるまがついとったけぇ」と教えてくれました。先生がSくんからかぶらない理由をきいてくれていて、Sくんのマークをつけてくれていたようです。困っていることを聞き、どうしたら解決できるのかを考えることで、子どもたちにとってのいい姿を導くことができ、本当によかったですね。